東名300km電費検証【08】『EQA 250 +』~80km/h巡航なら約540km走破の実力を確認

市販電気自動車の実用的な電費性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第8回はメルセデス・ベンツ『EQA 250 +』で実施した。2024年4月に登場した新型EQAは、どんな電費を記録したのだろうか。

東名300km電費検証【08】『EQA 250 +』~80km/h巡航なら約540km走破の実力を確認

【インデックスページ】
※計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
東名300km電費検証【INDEX】検証のルールと結果一覧

100km/h巡航での実用的航続距離は約400km

EQAは2024年4月に新型に生まれ変わり、車名は『EQA 250 +』と「+」が追加された。大きな進化のポイントは、バッテリーが66.5kWから70.5kWに増強されて、一充電走行距離(WLTC)が181km多い591kmになったことだ。この冬から計測してきたライバル達の中ではbZ4X(2040kg、Zグレード、AWD)に次いで、2020kgと2番目の車重のEQAはどこまで電費を伸ばすことができるだろうか。頼もしさを増したEQA+の電費検証結果を報告する。

カタログスペックの一充電走行距離である591kmを、バッテリー容量の70.5kWhで割った電費(目標電費)は8.38km/kWhになる。5月某日の計測日の外気温は最高26℃、電費検証に臨んだ深夜は16℃〜20℃だった。

各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしている。

【今回の計測結果】

目標電費を超えたのはD区間の往路、BとC区間の復路の3区間だった。往復では80km/hが7km/kWh台、100km/hが5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台となり、80から100km/hへの高速化で6km/kWh台を飛び越えて電費が悪化している。

120km/h巡航では約330kmの航続距離性能

各巡航速度の電費は下記の表の通り。「航続可能距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、591kmとするカタログスペックの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率だ。

【巡航速度別電費】
巡航速度別の電費計測結果を示す。80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って求めている。100km/hと総合の電費も同じ方法で求めた。

各巡航速度
の電費
km/kWh
航続可能距離
km
一充電走行距離
との比率
80km/h7.64538.591%
100km/h5.66399.268%
120km/h4.65327.855%
総合5.75405.469%

総合電費の5.75km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続可能距離は約405kmとなる。100km/h巡航では約399km。80km/h巡航であれば約539kmを走り切れる結果だ。

この結果を同じ5人乗りのプレミアムブランドで、バッテリー容量も1.5kWhの差(EQA:70.5kWh、EX30:69kWh)しかないボルボ『EX30』と電費を比較してみる。

すると、100km/h(EQA:5.66、EX30:5.26)、120km/h(EQA:4.65、EX30:4.64)、総合(EQA:5.75、EX30:5.45)は、同等の数値を記録している。それに対して80km/hはEQAが一歩上回り、EQA:7.64、EX30:6.86と差があり、ゆえに航続可能距離もEQA:538.5km、EX30:473.1kmと65kmの開きが出た。なお、車重はEQAが2020kg、EX30が1790kgとEQAが230kgも重く、Cd値は両車ともに0.28だ。

各巡航速度の比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると26%電費が悪化、120km/hから80km/hに下げると1.6倍(164%)も航続距離を伸長できる結果になった。

ベースの速度比較する速度比率
80km/h100km/h74%
120km/h61%
100km/h80km/h135%
120km/h82%
120km/h80km/h164%
100km/h122%

運転支援機能の使いやすさと信頼性は「さすがベンツ」

この東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で低速巡航することをルールとしている。そのために、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用。交通量の少ない深夜の検証とすることで、できるだけブレが多くならないように留意している。

EQAの高速道路走行が静かで快適だったのは試乗記(関連記事)でお伝えした通り。60km/h以上で作動するLKA(レーンキープアシスト)は、東名高速の鮎沢PA付近の300Rも曲がっていく実力を有する。

ACCの設定方法

ACCは、ステアリング右スポークの下側にあるスイッチで操作する。走行中に「SET −」スイッチを押すと、その時点の速度で定速走行をスタートできる。速度調節は「SET +」か「SET −」スイッチを押すと10の倍数で増減する。「SET +」か「SET −」スイッチをスワイプすると1km/hごとに調整可能。先行車との車間距離は左上のスイッチで、4段階で調整できる。ACCを含めた先進運転支援機能の使いやすさや信頼性は、さすがメルセデス・ベンツという印象だった。

スピードメーター表示とGPSによる実速度の差はどの速度でも3km/hだった。実速度を100km/hにしたい場合は、メーター速度を103km/hに合わせる。

80km/h
巡航
100km/h
巡航
120km/h
巡航
メーターの速度
km/h
83103123
ACC走行中の
室内の静粛性
db
686865

巡航時の車内の最大騒音(スマホアプリで測定)は、80km/hと100km/hで68dB、東名よりも路面がきれいな新東名での120km/hは65dBだった。数字的には最近計測したライバルと変わらないのだが、ドアミラー付近からの風切音は最も静かな印象を受けた。

最大出力102kWでの充電を確認

充電結果

●クリックすると拡大表示します。
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「SOC推計充電電力量」は、充電前後のSOC値から算出した電力量。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。

急速充電は3回試してみた。特筆すべきは、1回目の150kW器で、車両の急速充電性能(100kW)を証明する最大102kWでの充電を確認できたことだ。

30分で約41.5kWhを充電できたので、検証結果の総合電費である5.75km/kWhとして約239km走行分、80km/h巡航の7.64km/kWhであれば317km走行分を補給できたことになる。ロスを勘案して10%減になるとしても優秀だ。

充電中のセンターディスプレイ。中央の電池マークの下に出力が表示される。

タイヤ・ホイールはオプションの20インチ

タイヤとホイールは55万円のパッケージオプション「AMGラインパッケージ」に含まれる20インチのそれだった。

【装着タイヤ】
メーカー/Continental
ブランド(商品名)/EcoContact 6 MO

サイズ空気圧製造週年
左側右側
フロント235/45R20 T XL32022232223
リヤ235/45R20 T XL32025232223

※製造週年は「2223」の場合、2023年の22週目に製造されたことを意味する。

EQAのEV性能を活かせる世の中へ

新型は従来モデルにおけるカタログスペックの一充電走行距離である410kmと同等の距離を100km/hで巡航できてしまう進化を果たした。80km/h巡航や流れの良い下道では7km/kWh超えを確認したので、500kmほどのドライブもこなせる実力を備えている。

100kW出力に対応する急速充電性能により、150kWの充電器では30分で254km分をチャージできた。その一方50kW充電器では127kmと半分の距離にとどまった。この結果を目の当たりにすると、高速道路での経路充電でなくても、より高出力な充電器の充実化と充電量に応じて課金される公平な従量課金を望みたくなる。

この点についてはe-Mobility Powerの四ツ柳社長が、高速道路は90kW以上の充電器を設置する方針であること、従量課金も前向きに考えているとの考えを示している(関連記事)ので、先行きは明るい。一般道においても、パワーエックスの充電器(関連記事)など、150kW出力充電器が増えてきている。

e-Mobility Powerからは、150kW出力のマルチプラグ器や、最大350kWの次世代超高出力器開発のニュースも届いている。EQAのように優れた効率や充電性能をもつEVをより快適に楽しめるよう、日本のEV環境進展に期待したい。

【関連記事】
eMPが高速道路SAPAのEV用高出力急速充電器増強を発表~経路充電への不安は解消するか?(2024年4月22日)
e-Mobility Powerが最大350kWのEV急速充電器開発を発表〜気になるポイント徹底解説(2024年5月28日)

EQAの充電口は急速がクォーターパネル、普通はバンパーと分かれているが、両方ともに右リヤにあるので、運転席からもアクセスしやすく、充電の際にバック駐車できる点も個人的にはありがたい。

取材・文/烏山 大輔

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 断鉄 様
    記事をご覧頂き、ありがとうございます。

    「このテストは100%充電でしょうか?」は、SOC 100%で計測を開始しているのか?という質問でしょうか?
    もし、そうだとすれば、答えは「いいえ」です。
    充電性能もテストしたいため、駿河湾沼津SA下りになるべくSOCを下げた状態で到着したいという意図もあります。

    「メルセデスには、推奨保護充電率はないのでしょうか?」
    メルセデスに限らず、私が取説を確認した全てのメーカーで日常的には80%までの充電を推奨しています。
    遠出がある時だけ事前に100%になるように設定するという使い方も推奨しています。

    80km/h巡航について
    下記URLのこの検証企画のルールはご覧になっておりますでしょうか。
    https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/tomei-300km-energy-consumption-verification-index-rules-and-results-overview/
    ご存知かとは思いますが、東名には制限速度80km/h区間があります、それに合わせて巡航速度を設定しております。
    それ以上で走る場合には、ご認識の通り100km/hや120km/hの往復電費を参考にして頂ければと思います。

    「BEVの航続距離評論に多い「80km/h」測定はBEV擁護にしか見えません。」
    私は一切、BEVを擁護しておりません。
    下記URLのBYDドルフィンの記事では、LKAについて相当なダメ出しを記載しています。
    https://blog.evsmart.net/byd/dolphin/tomei-300km-energy-consumption-test-01-byd-dolphin-practical-energy-consumption-winter-challenges/

    このEQAの電費記事についても「100km/h巡航での実用的航続距離は約400km」の見出しは、一充電走行距離591kmからすれば、2/3にあたるあまり良い数字ではありませんが、見出しにしています。

    また、80km/h巡航だけではなく、100km/hや120km/h巡航の電費も計測していることからも、擁護していないことをお分かり頂けると幸いです。

    以上、よろしくお願い致します。

    1. 明確な回答ありがとうございます。
      下名の認識が誤っていたのかもしれません。
      しかし、このブログを読まないような一般の方にBEVが浸透するのは、まだまだ先ですね。
      金銭的にも使用感も我慢を強いられのが今のBEVの事実ですから、ユーザーである私は認識しています。
      CNのための我慢は、未来に負の遺産を残さないためには崇高な考えですけど大衆の意識からは遠いですね。

  2. 私もテスラ乗りなのでBEVユーザーですが、このテストは100%充電でしょうか?
    テスラは、バッテリー保護の
    ため(バッテリー種類によりますが私はパフォーマンスなのでリチュウムです)90%→80%充電と推奨充電率を下げています。
    メルセデスには、推奨保護充電率はないのでしょうか?
    100%充電は、スクランブル(遠出の緊急)使用と考えてます。
    すると日常充電から高速に乗るとさらに航続距離は短くなりますね。
    また、失礼ですがメルセデスユーザーが80km/hキープで走るのは現実的でストレスの塊でしかなく、むしろガンガン飛ばされているユーザーも多いので電費は4km/kwくらいが現実的じやあないでしょうか?
    さらに法改正でトラックの最高速度が90km/hになったので80km/h走行の計測は非現実的だと思います。
    大型トラックより遅い速度でBEVは走る?難しくないですか?
    これから航続距離を評価頂く際は「上限法定速度」で計測頂く方が現実的とご提案します。
    新東名の120km/hになるとさらに電費は悪化しますが現実的な測定になると思います。
    どうもBEVの航続距離評論に多い「80km/h」測定はBEV擁護にしか見えません。
    まあ、BEVも過渡期なのは、重々承知していますが、一般ユーザーの気持ちを切り替えるには、不利を承知で今のICEやHEVと同じ土俵で評価するべきだと思います。

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この記事の著者


					烏山大輔

烏山大輔

1982年生まれ、長崎県出身。高校生の時にゲームソフト「グランツーリスモ」でクルマに目覚め、 自動車整備専門学校を卒業後は整備士、板金塗装工、自動車カタログ制作、 自動車雑誌カーグラフィック制作、ALPINA総輸入代理店のNICOLEで広報・ マーケティングと一貫してクルマに関わる仕事に従事。 現在の所有車はインテグラ・タイプR、ハイゼットとガソリン車のみだが、BEVにもFCEVにもとても興味を持っている。

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