XEAMが導入する電動バイクZERO『SR/S』&『SR/F』〜中年ライダー試乗記第2弾

自動車評論家の諸星陽一氏が本格的電動バイクに初試乗。シリーズ企画第2弾は、XEAMが導入する電動の大型二輪『SR/S』と『SR/F』で感じたフィーリングなどをレポートします。

XEAMが導入する電動バイクZERO『SR/S』&『SR/F』〜中年ライダー試乗記第2弾

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大型電動バイクは今のところ車検が不要

前回、リターンライダーが増えている。若者は見かけないということを書いたのだが、意外や意外、先日見たニュースではまた若者がバイクに乗り始めたという。単に私のまわりの若者がバイクに乗っていなかったというか、私のまわりに若者がいなかったというか…… 大変申し訳ないが前言撤回、というかリターンライダーが増えていることは事実なのだが、若者も乗り始めているということらしい。

さて、前回はZEROの普通二輪であるDSとFXSのフィーリングをお届けしたが、今回は大型二輪となるSR/S、そしてSR/Fのフィーリングをお届けする。

その前に少し免許の話をしておこう。二輪車にはいくつかの免許がある。一番簡易なのは原動機付き自転車、いわゆる原付免許でこれは学科試験のみで取得可能。普通車の免許を取れば原付にも乗れる。小型二輪免許は原付二種と言われる125ccまでの二輪車免許で学科と実地がある。普通二輪車は400ccまでの二輪免許で同じく学科と実地がある。ここまでは16歳になれば取得可能だ。この上の大型二輪になると排気量に制限なく乗れるが18歳以上でないと取得できない。

電動二輪の場合、運転できる免許はモーターの定格出力で区分されており、原付免許で乗れるのは0.6kW以下、小型二輪免許が0.6kW超1.0kW以下、普通二輪免許が1.0kW超20kW以下、大型免許が20kW超となる。原付以外の二輪免許にはAT限定免許が存在し、AT免許の場合はクラッチ操作とギヤ操作のないモデルのみが運転できる。基本的に電動二輪はクラッチ操作やギヤ操作がないのでAT免許で問題ない。(しかしこれから免許を取得しようと考えている方はMT免許の取得をおすすめする)

ここまでは免許の話で、ここからは道路運送車両法の話に切り替える。免許は4種類(AT限定を細分化すると7種類)が存在する二輪だが、道路運送車両法では0.6kW以下が原付一種、0.6kW超1.0kW以下が原付二種、1.0kW超が軽二輪という3種類の区分で、エンジン車の250cc超にあたる自動二輪という区分は電動バイクには存在していない。軽二輪と自動二輪の最大の違いは何か? それは軽二輪には車検制度がなく、自動二輪には車検制度があるということ。すなわち現在の状況では、どんなにハイパワーなモデルであっても電動二輪には車検はない。

試乗車はEV用普通充電器で充電しつつ待ってくれていた。

加速は敏感だが扱いやすい『SR/S』

写真提供/XEAM

さて、前置きが長くなってしまったが、SR/SとSR/Fに話を戻そう。最初に試乗したのはカウル付きのSR/Sだ。搭載されるモーターは82kW(110ps)で、最高速度は200km/hとカタログには記載されている。重量は229kgとなっている。私が最後に所有していたホンダのCB750(RC42)が235kgだったので重量的には少し軽い。いや、CB750はガソリンをタンクに入れなければならないので重量的にはSR/Sが有利だ。CB750は重力で燃料をキャブレターに供給していたので、ガソリンタンクは高い位置にある。重心ということで考えればSR/Sのほうが有利とも言える。シート高は787mmと低めだが、シート幅があるため多少そこでロスがある。とはいえ、日本人体型(よーするに短足である)で172cmと平均的身長の私でもしっかりと足は着く。

右側スイッチボックスにあるモーターストップスイッチを走行モードにしてアクセルをひねると、車体がグッと前に押し出される。SR/Sはカウル付きなのでフロントまわりに重い感じを受ける。総重量200kgオーバーで、フロントヘビーのバイク、そこに大きなトルクで後ろから押されるのは普通であればちょっとした怖さが伴うものだが、SR/Sに関してはあまりその感覚はない。もっとも大きな要因は電動なのでエンストがないことだ。大きなトルクで押されて「おっ」と思った瞬間にエンストすると、立ちゴケの可能性がグッとアップする。

走り出すとけっこう楽な印象だ。アクセル操作に対してバイクの加速感はかなり敏感である。SR/Sはストリート、スポーツ、エコ、レインの4つの走行モードが存在する。スポーツモードにすると加速感はさらに増すが、テスラのモデルSでアクセルをベタ踏みして脳みその血液が全部後頭部に移動するほど(かのような、だが)の衝撃さはない。一般道を乗るのであれば、エコかレインで問題なし。それでも十分にトルクフルで速い。コーナーで車体をねかせてからアクセルをひねっていくと、車体が立ち上がるような動きになる。これは、モーターが横置きに搭載されそれが高速回転しジャイロ効果を生んでいるからなのか? というのが私の推測。

フロントが重い分、細かい取り回しは少し苦手である印象を受けた。駐車場のなかでハンドルを目一杯切ってUターンさせようなどというのはちょっと苦手な感じがする。フロントが重いことが大きく影響するが、カウルによってステアリング切れ角がわかりくいことあるのだろう。どこまで慣れているかが大きく影響するのだが、カウル付きはどうしてもやりにくい部分がある。また、押し歩きのときもカウルがあるとバイクを身体に押し当てにくい、カウルによってハンドルが遠くなるという点もある。

一方でスピードが上がってきた際にはカウルがあるとビックリするくらいに楽だ。空気抵抗は速度の二乗に比例するので、速度を上げていけばいくほど身体が後ろに持っていかれるのだが、カウルが装着されている場合、少し身体を前傾にしてやれば走行風を後ろに逃がしながら走ることができる。SR/Sの最大航続距離はカタログデータで259km(タイプ3の場合は306km)。バイクはクルマほど長時間休憩なしで乗れる乗り物ではないが、ロングライドにはカウル付きが有利なのは言うまでもなく、高速道路を使いながらツーリングに出かけるのであればSR/Sは格好の相棒となるだろう。

軽快な印象の『SR/F』は街乗りにオススメ

写真提供/XEAM

一方、カウルレスのSR/Fはビックリするくらいに軽快。もともとネイキッド(カウルのない)バイクばかり乗ってきた私にとっては、このほうがすごく自然だ。乗り方が昔のままなので、ハンドルを切ったときにミラーが一緒に向きを変えないタイプのカウル付きバイクはどうも乗りにくい。また、フロントまわりの重さを感じないのも扱いやすさの要因だ。SR/SとSR/Fの違いはカウルの有無だが、重量差は9kgになる。この重量差がハンドリングのよさに大きく貢献している。

とくにSR/Sに乗ったあとにこのSR/Fに乗ったので、その軽快さは際立つ印象があった。加速や減速などはSR/Sと同じだが、車線変更を行う際のキビキビさやヒラリヒラリ感はSR/Fが上。都内で乗ったり、高速道路を使わないツーリングではSR/Fがおすすめだろう。

SR/S、SR/Fともに変速機はない。クラッチ操作もギヤ操作も不要だというと、スクーターのような乗り味を想像するかも知れないが、スクーターはベルト式CVTを介している。SR/SもSR/FもこのCVTがないことで、加速フィールが自然。それでいてエンジンモデルとは異なる低速トルクが太くしっかりとしている。そして、機械感がないかといえばそんなこともなく、しっかり「マシン」を感じさせてくれるから不思議だ。

さて、価格だ。SR/Sのトップモデルであるタイプ3はバッテリーの最大定格容量が18kWhで329万9800円、14.4kWhのバッテリーを積む標準モデルとなるタイプ1は264万9800円。カウルのないSR/Fは14.4kWhのバッテリーで276万9800円。

一充電航続距離は、おおむね市街地で250km以上、高速巡航時で150km程度の航続距離は実用的にも十分だろう。EVのような急速充電はできないが、J1772規格のコネクターを使った日本でも一般的に普及している普通充電に対応しているので、EV用の普通充電スポットを「経路充電」のように活用してツーリングの距離を延ばすことも可能である。ただし、日本の高速道路SAPAでは200Vの普通充電器は設置されていないのが悩ましいところではある。

『SR/S』『SR/F』スペック

SR/S Type1SR/S Type2SR/S Type3SR/F
モデル2020 used2021 new2021 new2020 used
カラーセルリアンブルーセルリアンブルースカイラインシルバーレッド
価格(税込)2,649,800円2,949,800円3,299,800円2,549,800円
モーター最大出力82kWh82kWh82kWh82kWh
最高速度200km/h200km/h200km/h200km/h
バッテリー容量14.4kWh14.4kWh18kWh
※オプションで+3.6kWh
14.4kWh
最大航続距離259km259km306km259km
70mph巡航時航続距離132km132km156km132km

※輸入発売元であるXEAM在庫モデルのカタログ資料参照

まだまださすがに電動バイクは高価ではあるが、そのライドフィールは魅力にあふれている。バイクに乗りたいが、排ガスの出る乗り物は避けたい、近所の目があってバイクの排気音が気になるといった方なら大満足のはず。レンタルバイクでも扱われているとのことなので、一度試してみるのもいいだろう。

(取材・文/諸星 陽一)

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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