アメリカ次期大統領のバイデン氏が電気自動車シフトの推進を宣言

来年1月にアメリカ大統領に就任するバイデン氏は気候変動政策や公害対策を強化する姿勢を鮮明にしており、先週土曜日の会見で「経済を立て直し、雇用を増やしつつも排出ガスを減らすよう大きな努力をしていく」と表明しました。環境問題への取り組みは新政権の柱になり、電気自動車シフトの促進も含まれます。

アメリカ次期大統領のバイデン氏が電気自動車シフトの推進を宣言

環境政策に取り組み、新しい雇用を創出する

アメリカ主要メディアの報道によると、次期大統領のバイデン氏は昨今の地球を取り巻く環境に関して「危機的な状況」と表現し、具体的にはトランプ政権時に一度離脱したパリ協定への復帰や、脱炭素への主要な取り組みとして電気自動車の活用に言及しました。

トランプ政権は100を超える環境規制の基準を緩めたり撤廃するという、世界のトレンドに逆行する政策を続けてきました。また自らの重要な支持基盤である石油業界にも手厚い支援をしてきましたが、バイデン氏はクリーン・エネルギーへのシフトを進める方針です。

ここで重要な役割を果たすのが、元ミシガン州知事のジェニファー・グランホルム氏です。

12月19日の会見で、バイデン氏は閣僚に起用する6人を追加で発表しましたが、彼女にはエネルギー長官に就任してもらう意向です。グランホルム氏は2016年の大統領選でヒラリー・クリントン氏のエネルギー・アドバイザー役を務め、州知事時代にはクリーン・エネルギー産業の発展に貢献しました。2009年にはバイデン氏とともに破綻寸前のGMとクライスラーの救済に取り組み、救済資金の中にEV用バッテリーへの投資分をねじ込みました。

バイデン氏は「彼女はキャリアを通じて、クリーン・エネルギーのある未来、新しい雇用、新しい産業、よりクリーンで安いエネルギーを促進するため、州、都市、ビジネスレベルで活動してきました。彼女のビジョンと信念をアメリカのエネルギー省に提供してもらいたいのです」と評価しています。グランホルム氏は州知事時代にミシガン州初の再生可能エネルギー配分基準を確立し、自動車会社とともに電気自動車開発に取り組みました。

ミシガン州のデトロイトは、フォード、GM、クライスラーが産まれた都市。

バイデン氏は新しい閣僚候補を紹介する際に、彼らがいかに雇用の創出に貢献できるか、という点も強調していました。国内産業で無視できない大きさの石油産業や(内燃機関)自動車会社への社会依存度を減らすというのですから、そこの不安はなるべく払拭したいのは当然です。

国全体で50万基以上のEV充電ステーションを設置

具体的には、50万基以上の電気自動車用充電ステーションや150万戸のエネルギー効率が良い住居を建設するとしています。また連邦政府はアメリカの組合労働者が作った電気自動車のみ購入し、モダンで厳しい環境にも耐えられるインフラとクリーン・エネルギーのある未来を目指していきます。

消費者には補助金を出し、電気自動車への買い替えを積極的に勧めます。「これにより、アメリカの自動車業界では100万の新しい雇用が生まれます。炭素由来の汚染がまったくない電気自動車セクターを2035年までに確立し、将来の大統領が以前の状態に巻き戻せないようにします」と、バイデン氏は電気自動車普及に前向きな姿勢を強調しています。

グランホルム氏も「これから数年で電気自動車、バッテリー、太陽光パネルなどクリーン・エネルギー技術に世界中で数百兆円規模の投資がなされるため、それに付随して数百万の雇用が生まれる」ことを強調しました。

「しかしその仕事の場はどこになるのでしょう? 中国でしょうか。この希望にあふれた電気やクリーン・エネルギー市場に必死に食らいついている別の国、それともここアメリカでしょうか? より良い未来のためには、商品をまず作り、『メイド・イン・アメリカ』のスタンプを押して世界中に輸出する必要があります。正しい政策を行えば、これらの仕事をアメリカの労働者が勝ち取れるのです。私達ならできます」

グランホルム氏の言葉は、明確で力強いメッセージだと感じます。

バイデン政権は再エネや電気自動車ですでに実績のあるグランホルム氏を含め、環境政策のそれぞれの分野に造詣の深い人材を閣僚として採用する予定です。

日本でも2035年までにガソリン車販売を禁止する方向で調整が始まり、東京都からもそれに先駆けて2030年までに脱ガソリン車を目指すとの発表はありました。しかし先日自工会豊田会長の発言を伝える記事でも言及しているように、カーボン・ニュートラルな社会や電気自動車普及は、国が政策で下支えをし、明確な目標をもってインフラを整備していかなければ達成できません。

日本でも国が音頭を取って基幹産業である自動車業界の転換期を支え、新しい社会を形成していくことは可能なのでしょうか。すでにEVの分野では遅れが目立ち始めている日本ですが、これからの巻き返しを願います。

【参照記事】
Biden Introduces His Climate Plan(The New York times)
Biden introduces ‘forward thinking’ Granholm as his energy secretary nominee(The Detroit News)
Biden’s expected Energy Department pick, Granholm, could lead charge on electric cars(REUTERS)

(文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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