BMW『i3』レンジエクステンダー装着車で「東京=白馬」長距離往復レポート

バッテリー容量が42.2kWhに増量されたBMW『i3』で、東京から長野県白馬村まで往復してきました。発電専用のエンジンを備えたレンジエクステンダー装着車です。はたして、電池残量への不安なく走りきることはできるのでしょうか。

BMW『i3』レンジエクステンダー装着車で「東京=白馬」長距離往復レポート

日本で売れるのはほとんどがレンジエクステンダー装着モデル

10月24日に開催された『ジャパンEVラリー白馬 2020』と、同時開催される白馬村主催の『白馬 COOL CHOICE イベント』の『最新EV&プラグインハイブリッド車展示&試乗会』のために、BMWから『i3』の広報車をお借りして往復してきました。

i3 がデビューしたのは2013年。日本でも2014年に初期型が発売されました。当初から発電専用にバイク用の600cc程度のDOHCエンジンを備えた「レンジエクステンダー」モデルをラインアップ。カーボン強化樹脂製のボディを奢った点などを含め、BMWが提案するBEVとしてユニークな個性をもった一台でした。

当初はバッテリー容量が22kWhだったこともあり、日本で売れているのはレンジエクステンダー装着モデルばかり、という評判でした。その後、2016年にバッテリー容量が33kWhとなり、2019年にはさらに42kWhに増量されました。その都度、EVsmartブログでも記事にしているので、ご参照ください。

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初期型22kWhのモデルは、長期モニターをやった経験もあり、レンジエクステンダーの心強さを実感しました。そのイメージが根強いからでしょうか、BMWジャパンの広報ご担当者に伺ったところでは、42kWhに電池増量した今でも、日本国内で売れるのはほとんどがレンジエクステンダー装着モデルらしいです。

日産リーフZE1が40kWhですから、42kWhあれば電気自動車として十二分の航続距離を備えています。個人的には、レンジエクステンダーがなくても不安なく乗れる電気自動車のはずなのに、とも感じるのですが。東京=白馬往復の長距離ドライブで、実感を確かめてみようというわけです。

今回試乗したのは、SUITEというインテリアなどのオプションを装着し、車両本体価格は548万円、オプションが83万3000円で、合計で631万3000円(すべて税込価格)のモデルです。

往路は中央自動車道経由の約270km

まず、東京から白馬への往路です。関越道経由のほうが距離は少し短いのですが、私の拠点である三軒茶屋あたりから関越に乗るのがちょっと面倒。永福ランプからサクッと乗れる中央自動車道経由がいつものルートです。

Googleマップの検索結果をキャプチャ。

計画としては、八ヶ岳PAの50kWh器で1回、休憩がてら30分充電すれば、レンジエクステンダーを起動しなくても、電池残量半分近くは残して到着できるだろうという目論見です。

自宅200Vで満充電スタート時の航続可能距離表示をうっかり撮影し忘れてました。表示されてた距離は300kmくらいだったと思います。左側に表示されているガソリンマークの「141km」は、レンジエクステンダーを使った際の予想航続可能距離。ガソリン(無鉛ハイオク)タンクは9ℓなので、レンジエクステンダーでの燃費はざっくり15〜16km/ℓ程度ということですね。もちろん、この数値は走り方で変わります。

スタートから約100km。釈迦堂PA下り線でトイレ休憩。上り勾配気味の区間でもあったので100km走って航続可能距離は153kmになっています。でも、レンジエクステンダーの航続距離が154kmに増えているのは、直前の笹子トンネルを過ぎてからの下り坂が影響しているのだと思います。ま、このあたりの数字はあくまでも「目安」ですね。

甲府を過ぎるあたりから、ACCが勝手に解除されちゃうほどの豪雨に見舞われました。八ヶ岳PAあたりでも土砂降りだったので、予定していた充電はパス。諏訪湖を過ぎるあたりで、電池残量を25%残してレンジエクステンダーを起動しました。

私としては「レンジエクステンダーなんて使わなくても電池だけでバッチリ!」レポートをしようと思っていたのですが、充電しなくても走れる誘惑に負けてしまいました。これぞ、REXの魔力ですね。

そんなわけで充電は0回。ガソリンを半分くらい使って、電池での航続距離62km、レンジエクステンダー68km、合計で130kmの余力を残してEVラリー会場の白馬五竜に到着しました。

往路を走ったのはEVラリー前日の10月23日です。イベントで使う荷物を満載してました。しかも、別件仕事が片付かず朝の出発が予定より1時間以上遅れてしまったので、釈迦堂PAとみどり湖PAのトイレ休憩2回だけで、ランチも抜きで集合時間にあまり遅れないようそれなりに快走しました。所要時間は約3時間。充電なしでこの距離を、この時間で走れるのは、BEV応援派としてはちょっと口惜しいものの、便利ですね。

会場設営などの準備が終わり、白馬村内のそば屋さんでスタッフの夕食、までに小一時間余裕があったので、道の駅白馬で充電しておくことにしました。

このi3、翌日は試乗車としてフル稼働しなくちゃいけません。スタッフが泊まる『あぜくら山荘』にも2口のEV充電用コンセントがありますが、ほかの試乗用車両も集結するので、3時間程度の200V充電で最低でも残量80%くらいにはなる程度。ざっくり50%以上には充電しておきたかったからです。

道の駅白馬のQCは最大出力25kWhの「中速」なので、30分では47%までしか入りませんでした。おおむね、30分で20%くらいというイメージですね。18時30分の夕食集合時間ギリギリまで、約20分弱のお替わりでSOCは65%に。

宿の200Vコンセントも無事に使えたので、翌朝は余裕の100%で試乗会に向けて出発することができました。

宿で充電できるのは、やっぱり安心ですね

白馬村で、日本EVクラブスタッフがいつも泊まる『あぜくら山荘』は、白馬EVクラブで活躍する渡辺さんちでもあり、EV用200Vコンセントを2口用意しています。

この日、あぜくら山荘に泊まったスタッフが乗ってきた電動車は、RAV4PHVと、BMW iX3の2台がPHEV。もう1台が日産リーフe+で、途中のSAで充電してきたのでまだ70%以上電池残量があるとのこと。2つのコンセントは、私が乗ってきたi3と、別のスタッフが乗ってきたHonda eが夜通し使うことができました。

これなら、少なくとも10時間くらいは充電できたので、道の駅でお替わりしなくても大丈夫でした。ともあれ、宿泊施設で充電できるのは安心ポイント高いです。

前夜はけっこうな雨でした。何度かカーシェア試乗して、充電リッドが上向きに開けっぴろげなのが気になっていたHonda e。さすがに、雨対策はしっかりしているようで、水が溜まっているようなことはなかったものの、落ち葉が降り積もってました。オプションで用意されると聞いている充電口カバーは必須で買っておいたほうがよさそうです。

復路は関越道経由、約260km

復路は25日。『EV気候マーチ』と名付けた白馬村内のパレードを終え、電池残量80%くらい、ガソリン残量50%くらいでスタートしました。お昼前の出発だったのですが、Googleマップで確認すると中央道上り線はすでに渋滞が始まっていたので、比較的スムーズに流れそうな関越道ルートを選択。距離は約260kmです。

帰りこそ、横川SAあたりで釜飯食べつつ充電して、レンジエクステンダーは起動せずに東京まで走るぞ! と思ったのですが……。

前日のイベントで疲れ果てていて、あまり写真も撮れなかったのですが、横川SAは大混雑。急速充電器も先客が使用中だったのでスルー。途中、さすがにお腹が減ったので、急速充電器がないハイウェイオアシスららん藤岡にピットイン。ちょっと遅めの昼食&休憩を取りました。

さらに、このあたりから関越道も大渋滞です。さすがに1回は充電しないと東京まで届きそうにありません。でも、上里SAも使用中だったのでスルーして、レンジエクステンダーを起動。「高坂か三芳、空いてそうなところで充電しよう」と計画を変更しました。

藤岡の合流あたりから始まった長い渋滞を抜け、高坂SAでちょうど充電器が空いていたので休憩&チャージ。残量30%くらいから、75%くらいまで充電できました。

航続可能距離は268kmと表示。ガソリン残量が残り1/4くらいになっていたレンジエクステンダーは停止して、ここから先は電気だけで走ります。

途中、日本EVクラブの事務所に寄って荷物を下ろし。結局、電池残量はおよそ半分。航続可能距離155kmを残して自宅に帰着しました。

翌朝、私の自宅ガレージで満充電になったi3の航続可能距離は309kmと表示されていました。頼もしいですね。

電池容量控えめな電気自動車に乗っていると、今回のように「やばい、遅刻しそうだ!」って時や、高速道路SAPAの充電渋滞に対して無力です。だからこそ「自動車の使い方を電気自動車に合わせるんだぁ」と常日頃は主張している私ですが、レンジエクステンダー、付いてるとやっぱり便利だし、無理が利きますね。

試しに、中古車相場を検索してみると、33kWh(96Ah)モデルで300万円台、42kWh(120Ah)で400万円台前半くらいからって感じです。日本国内での売れ方を象徴するように、中古車のタマはほとんどがレンジエクステンダー装着モデル。電気自動車に興味はあるけど不安もあって、という方には、狙い目かも知れません。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 2016年式の22kwのRexに乗っています。
    すでに7万km以上乗っており、満充電でも80〜90km程度しか走りません。
    近所の買い物程度の利用に限定されます。
    Rexはほとんど使いません。

    太陽光発電から充電しているので、コストは0円です。
    今のバッテリーは性能が上がっていますので、乗り潰したらまたEVが欲しいですね。

  2. やっぱりこれからEV普及するにあたり各国、高速のEVスポットという特に需要が高くなるところをどう対応していくのかが課題なんだろうなぁ
    ほとんど普及していないいまですら充電スポット混んでると普及し始めたら洒落にならない

  3. 雨の時は充電パスすることができるのはいいですね、屋根付き充電スポットすくないですし。アプリに屋根付き検索機能が欲しい時もあります。

  4. 某所より33kWhのレンジエクステンダー付を5週間1600km程借りて乗ったことがあります。
    自宅はオール電化ですが、まだ外部に200Vコンセントは無くまた充電カードを契約していない車両なので、すべて外部での無料充電でした。
    自宅充電さえ出来れば充電カードを持たなくても問題無さそうでした。いざと言う時はガソリン入れれば100km走れるという安心感は絶大ですね。
    これ一台だけならレンジ付、複数所有ならばレンジ無でも良いなって思ってます。

  5. 本当の都心部以外でよく見かけるEV車は、リーフとBMWi3ですね。とこから見ても外形がユニークなので、リーフよりも印象にも残りやすいです。
    小さいバッテリー容量でもこんなに走れちゃう実体験記事、好きです。

  6. BMW i3 RExが初めてカリフォルニア州に導入された2014年ころ、その経緯をフォローしていたので興味を持って読みました。
     http://hori.way-nifty.com/synthesist/2014/04/bmw-i3-rexrezev.html
    Range Extender PHEVの特長がよく判るルポですね。

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この記事の著者

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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